社会に参画する自立した主体の一問一答と流れの解説
子どもから大人へ移る青年期の課題と心の働きを確かめ、社会的な存在としての人間、キャリア、伝統・文化・宗教とのかかわりをたどります。まず流れの解説を読み、一問一答(28問)と、用語から説明を選ぶ4択で確認します。
一度の正解は「正解済み」、別の日にも正解すると「定着」と表示します。
流れの解説
青年期という時期
子どもから大人へと移る青年期は、思春期の第二次性徴による身体の変化から始まり、やがて「自分とは何か」を問う心の変化へと進みます。ルソーは『エミール』で、人は一度目は存在するために、二度目は生きるために生まれると述べ、青年期の自我の目覚めを第二の誕生と呼びました。レヴィンは、子どもの集団にも大人の集団にも属しきれない青年をマージナル・マン(境界人)と表しました。
この時期には、親への精神的な依存から離れようとする心理的離乳が進み、親や教師の権威に反発する第二反抗期を迎える人もいます。反発は、自分の考えで判断し行動したいという自立への動きの表れでもあります。近代以降の社会では、学校教育の期間が延びたことなどから、青年期は以前より長くなったといわれます。
青年期には、自分の内面に目が向くようになり、他人と自分を比べて悩んだり、劣等感を抱いたりすることも増えます。同時に、友人との深い付き合いや、異なる考えをもつ人との出会いを通して、自分の価値観を確かめていきます。悩みや迷いは、他者の目に映る自分と、自分が思い描く自分とのずれに気づき、それを埋めようとする中で生まれるものであり、成長に欠かせない過程でもあります。
アイデンティティの確立
エリクソンは、人の生涯を8つの段階に分け、それぞれの段階に課題があるとしました。青年期の中心的な課題はアイデンティティ(自我同一性)の確立です。自分が他の誰でもない自分であり、過去から今まで一貫していて、社会からも認められているという感覚のことです。これがうまくまとまらず、自分が何者で何をしたいのかわからない状態をアイデンティティの拡散といいます。エリクソンは、青年が社会的な責任を一時的に猶予され、さまざまな役割を試しながら自分を探す期間をモラトリアムと呼び、この期間に意味を認めました。ハヴィガーストも、各段階で達成が期待される発達課題を示し、青年期の課題として両親からの情緒的な独立や職業の選択と準備などを挙げています。
アイデンティティは、一人で考え込むだけで得られるものではありません。家族や友人、地域の人々との関わりの中で役割を引き受け、周りから認められる経験を重ねることで、少しずつ形づくられていきます。
欲求と適応
マズローの欲求階層説では、人の欲求は生理的欲求、安全の欲求、所属と愛情の欲求、承認の欲求と積み重なり、最上位に自己実現の欲求があります。しかし欲求はいつも満たされるわけではなく、満たされないと欲求不満(フラストレーション)が生じます。また、同じくらい強い欲求が同時にあって選べない状態を葛藤(コンフリクト)といいます。
フロイトは、欲求不満や不安から自分を守るために無意識に働く防衛機制を明らかにしました。つらい記憶を意識の外へ押しやる抑圧、もっともらしい理由で自分を納得させる合理化、満たされない欲求を芸術やスポーツなど社会的に価値の高い活動へ向け変える昇華などがあります。防衛機制は一時的に心を守りますが、問題の解決そのものではありません。原因を見つめ、筋道を立てて対処することも大切です。
困難に直面したとき、八つ当たりのような衝動的な行動に走るのではなく、状況を整理し、目標や方法を見直して解決を図る合理的な対処ができるようになることも、青年期に身に付けたい力の一つです。
社会的な存在としての私たち
アリストテレスは人間をポリス的動物と呼び、共同体の中で他者とともに生きてこそ人間らしく生きられると考えました。人は家庭・学校・職場・地域などで様々な役割を担い、その積み重ねがその人のキャリアになります。キャリアは職業だけを指すのではなく、生涯を通じて自分らしい生き方を形づくっていく過程です。他者と共に生きる社会では、意見の違いを力で抑えるのではなく、対話で乗り越えることが求められます。ハーバーマスは、人々が対等な立場で理由を示し合い、合意を目指す対話の中で働く対話的理性を重視しました。
将来の進路を考えるときも、職業を一つ選ぶことだけが目的ではありません。働く人の話を聞いたり、地域の活動に参加したりする経験を通して、自分が社会の中でどんな役割を担いたいのかを考えることが、キャリアを形成する第一歩になります。社会に参画する自立した主体とは、他者から切り離された孤立した個人ではなく、他者と支え合いながら自分で判断し行動できる人のことです。
伝統・文化・宗教とのかかわり
私たちは、生まれ育った社会の伝統や文化の中で自分を形づくります。誕生・成人・結婚・葬送などの人生の節目に行われる通過儀礼や、正月・お盆などの年中行事は、人々が共同体の一員としてのつながりを確かめる機会になってきました。柳田国男は、名もない常民の暮らしや信仰を調べて日本の民俗学を確立しました。民俗学では、普段の日常をケ、祭りなどの特別な時をハレと呼んで区別します。自然のあらゆるものに神が宿るとする八百万の神の考え方も、日本の伝統的な信仰の特徴です。和辻哲郎は著書『風土』で、人間の在り方や文化がその土地の自然環境と結び付いていることを論じました。自分の文化の背景を知ることは、異なる文化や宗教をもつ人々を理解し、尊重することにもつながります。
宗教は、人が生きる意味や死をどう受け止めるかといった問いに答えを与え、多くの社会で道徳や生活の習慣の土台となってきました。現代の社会では、異なる信仰をもつ人々が同じ地域や職場で暮らすことも珍しくありません。互いの信仰や習慣を知り、違いを認めたうえで共に生きる道を探ることが求められています。
青年期の心のしくみや防衛機制は、まなびジムの倫理ジムの「青年期と人間の心」の章で、日本の伝統的な考え方は同じく「古代日本人の考え方と仏教の受容」の章で、さらに詳しく確かめられます。職業の選択については、第8章「職業選択と雇用・労働」で扱います。
一問一答
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