法の役割と私たちの生活の一問一答と流れの解説
法とほかの社会規範の違いから始め、公法と私法、契約と成年年齢、消費者の権利と責任をたどります。まず流れの解説を読み、一問一答(29問)と、用語から説明を選ぶ4択で確認します。
一度の正解は「正解済み」、別の日にも正解すると「定着」と表示します。
流れの解説
法と社会規範
社会には、人々の行動を方向づけるきまりである社会規範がいくつもあります。道徳や慣習、宗教の戒律もその一つですが、法は国家によって定められ、守られないときには裁判所の判断を通じて強制できる点に特徴があります。道徳は主に人の内面の在り方を問い、法は主に外に表れた行為を対象にします。ただし、人を傷つけてはならないという内容のように、法と道徳が重なる部分も多くあります。
法には、特定の人だけでなくすべての人に等しく当てはまるという一般性と、何が許され何が禁じられるのかを前もってはっきり示すという明確性が求められます。法は、紛争を解決し、人々の権利や自由を守り、社会の秩序を保つ役割を果たします。一方で、法ですべての問題を解決できるわけではなく、当事者どうしの話し合いや地域の助け合いが必要な場面もあります。法で何を決め、何を決めないかを考えることも、公共の学習の課題です。
公法・私法と私法の基本原則
法はいくつかに分類できます。国家の組織や、国・地方公共団体と個人との関係を定める法を公法といい、憲法・刑法・行政法などが当たります。これに対して、対等な私人どうしの関係を定める法を私法といい、民法や商法が代表です。さらに、労働法や社会保障法のように、弱い立場の人を守るために国家が私人の関係に関わる法は社会法と呼ばれます。
私法の分野では、個人の意思を尊重し、私人どうしの関係は当事者が自由に決めるという私的自治の考え方が基本にあります。契約自由の原則はその代表で、契約を結ぶかどうか、相手、内容、方式を当事者が決められます。ただし、当事者の力に大きな差があると、自由な取り決めがかえって弱い側に不利益をもたらします。そのため、労働や消費者の分野では、契約の自由に一定の制限を加える法律が定められています。
近代の私法は、すべての人が等しく権利と義務の主体になれるという権利能力平等の原則、自分の物を自由に使い処分できるという所有権絶対の原則、私的自治の原則を柱としてきました。また、他人に損害を与えても、故意や過失がなければ賠償の責任を負わないという過失責任の原則もあります。民法は、故意や過失によって他人の権利や利益を侵害し、損害を与える行為を不法行為とし、加害者に損害を賠償させます。ただし、欠陥のある製品による被害については、製造物責任法(PL法)が、製造業者に過失がなくても賠償の責任を負わせています。このように、過失の有無を問わずに責任を負わせる考え方を無過失責任といいます。
契約と成年年齢
契約は、申込みと承諾という当事者の意思表示が合致したときに成立します。売買の契約は口約束でも成立し、書面は原則として必要ありません。契約が成立すると、当事者は互いに権利をもち義務を負うので、一方的にやめることは原則としてできません。特定の人に一定の行為を請求できる権利を債権、それに応じる義務を債務といいます。例えば売買の契約では、売り手は商品を引き渡す債務を負って代金の支払いを求める債権をもち、買い手は代金を支払う債務を負って商品の引渡しを求める債権をもちます。ただし、だまされて結んだ契約は詐欺を理由に、脅されて結んだ契約は強迫を理由に取り消すことができます。民法では「強迫」と書き、刑法の罪の名前である「脅迫」とは字が違います。
民法の改正により、2022年4月1日から成年年齢は20歳から18歳に引き下げられました。18歳になると、親権者の同意がなくても、携帯電話やクレジットカード、ローンなどの契約を自分の判断で結べます。未成年者が法定代理人の同意を得ずに結んだ契約は、原則として取り消すことができ、これを未成年者取消権といいます。しかし、小遣いの範囲で行う買い物などは取り消せず、成年であるとうそをつくといった詐術を用いた場合も取り消せません。成年になるとこの保護がなくなるため、契約の内容を確かめ、結ぶかどうかを自分で判断する力が求められます。
消費者の権利と責任
現代の取引では、商品やサービスについて事業者の方が多くの情報をもち、消費者との間には情報や交渉力の差があります。このように取引の当事者の間で情報の量や質に差があることを、情報の非対称性といいます。1962年にアメリカのケネディ大統領は、安全である権利、知らされる権利、選ぶ権利、意見を聞いてもらう権利という消費者の4つの権利を示しました。日本では、2004年に消費者保護基本法が改正されて消費者基本法となり、消費者を保護の対象としてだけでなく、権利をもち自立した主体として位置づけました。
個別の法律としては、消費者契約法が、事実と違う説明などの不当な勧誘で結んだ契約の取消しや、消費者に一方的に不利な条項の無効を定めています。特定商取引法などは、訪問販売などで契約した後も一定の期間内なら理由を問わず解除できるクーリング・オフの制度を設けています。同じ法律は、会員が新たな会員を勧誘すると利益が得られるとして組織を広げる連鎖販売取引(マルチ商法)なども規制しています。困ったときは、地方公共団体の消費生活センターや、法的なトラブルの相談先を案内する法テラスを利用できます。消費者ホットラインの188番に電話すると、身近な消費生活相談の窓口につながります。2009年には、消費者行政をまとめて担う消費者庁が設置されました。消費者には、情報を集めて自ら判断し、トラブルにあったら声を上げるという責任もあります。
情報の非対称性が市場にもたらす問題は、第9章「市場経済のしくみ」で扱います。公法・私法や私的自治の原則は、まなびジムの政経ジムの「民主政治の基本原理」の章で、消費者の保護は同じく「消費者問題・環境・中小企業・農業」の章で、さらに詳しく確かめられます。
一問一答
問題一覧を開き、答えの帯を押すと答えが出ます。
全問題の一覧を見る
用語から説明を選ぶ(4択)
用語を見て、正しい説明を4つから選びます。似た種類の用語の説明と比べて選びます。回答後に正しい用語との対応を確認できます。キーボードでは1〜4で選べます。