公共的な空間の基本原理の一問一答と流れの解説
人間の尊厳と平等、個人の尊重から始め、社会契約説、民主主義と法の支配・立憲主義、自由と責任の関係をたどります。まず流れの解説を読み、一問一答(28問)と、用語から説明を選ぶ4択で確認します。
一度の正解は「正解済み」、別の日にも正解すると「定着」と表示します。
流れの解説
人間の尊厳と平等
公共的な空間を形づくるうえで、まず土台になるのが人間の尊厳です。人はそれぞれかけがえのない存在であり、誰かの目的のための単なる手段として扱われてはなりません。日本国憲法第13条は「すべて国民は、個人として尊重される」と定め、個人の尊重を国の基本に置いています。
尊厳ある個人は互いに平等です。平等には、すべての人を法的に同じに扱い、等しく機会を保障する形式的平等と、社会的・経済的な条件の違いを考慮して格差を是正しようとする実質的平等の二つの捉え方があります。性別による不平等を考える際には、社会的・文化的につくられた性別の役割や意識であるジェンダーへの理解が欠かせません。日本では1999年に男女共同参画社会基本法が制定され、男女が対等な構成員として社会のあらゆる分野に参画する社会を目指しています。
平等は、すべての人を同じように扱えば実現するとは限りません。例えば、車いすを使う人にとっては、段差のない通路やエレベーターがあって初めて、他の人と同じように学校や職場に通う機会が保障されます。何をもって平等とするかは、具体的な場面に即して考える必要があります。
社会契約説と民主主義
近代の民主政治を理論的に支えたのが社会契約説です。人間の本性や理性に基づく普遍的な自然法があり、人は生まれながらに自然権をもつと考えました。そのうえで、国家のない自然状態を想定し、人々が合意によって国家をつくったと説明しました。ホッブズは『リヴァイアサン』で、自然状態は「万人の万人に対する闘争」になるので、人々は主権者に自然権を譲り渡して平和を得るべきだとしました。ロックは『統治二論』で、人々は生命・自由・財産を守るため政府に権力を信託するのであり、政府が自然権を侵せば人々は抵抗権を行使できると説きました。ルソーは『社会契約論』で、主権は人民にあって譲り渡せないとし、公共の利益を目指す一般意志に基づく政治を求めました。三人の主張は異なりますが、国家は神から与えられたものではなく、人々の合意によってつくられるという点で共通しており、国王の権力は神に授けられたとする王権神授説を否定して、市民革命や近代憲法の理論的な支えとなりました。
民主主義は、リンカンの「人民の、人民による、人民のための政治」という言葉によく表れています。ただし、多数決で決めれば何でも正しいわけではありません。トクヴィルやJ・S・ミルは、多数派が少数派の自由を抑えつける多数者の専制の危険を指摘しました。社会全体の幸福を基準にする功利主義も民主政治を支える考え方の一つですが、少数者の権利をどう守るかは常に問われます。
民主主義では、自由な議論を通して意見の違いを明らかにし、互いの理由を聞き合ったうえで決定に至ることが大切です。多数決は話し合いを尽くした後の最終的な手段であり、決まった後も少数意見を尊重し、必要があれば決定を見直す余地を残しておくことが、民主的な決め方の条件といえます。
法の支配と立憲主義
権力者が思うままに統治する人の支配に対して、権力者も法に従うべきだとするのが法の支配です。その起源は1215年にイギリスの国王の権力を制限したマグナ・カルタに求められます。17世紀には裁判官コークが、「国王といえども神と法の下にある」というブラクトンの言葉を引いて国王の専断をいさめました。法の支配でいう法は、自然権を保障する正しい内容の法です。これに対し、19世紀のドイツで発達した法治主義は、行政が議会の定めた法律に従うという形式を重んじ、法律の内容の正しさは必ずしも問いませんでした。
憲法によって国家権力を制限し、国民の権利と自由を保障する考え方を立憲主義といいます。そのための仕組みが、権力を立法・行政・司法などに分けて互いに抑制させる権力分立で、『法の精神』を著したモンテスキューが三権の抑制と均衡を説きました。
民主主義と立憲主義は、互いに支え合う関係にあります。民主主義は国民の意思に基づいて政治を行うことを求めますが、多数派の意思であっても、憲法が保障する基本的な権利を奪うことは許されません。立憲主義は、多数決でも侵せない領域をあらかじめ定めておくことで、民主主義が多数者の専制に陥るのを防ぐ役割を果たしています。
自由・権利と責任・義務
自由は無制限ではありません。J・S・ミルは『自由論』で、他人に危害を加えない限り個人の自由は制限されないという他者危害原則を示しました。裏返せば、自分の自由を守るためには他者の自由と権利を尊重する責任があります。権利を主張することと、責任や義務を果たすことは切り離せません。
例えば、表現の自由は民主主義に欠かせない権利ですが、他人の名誉やプライバシーを傷つける表現まで無条件に許されるわけではありません。自分の権利を行使するときには、それが他者の権利とどう関わるかを考える必要があります。
個人が自分の利益だけを追うと、かえって全員に悪い結果を招くことがあります。囚人のジレンマは、互いに協力すれば両者によい結果になるのに、相手を信頼できずに自分の利益を優先すると両者に悪い結果になる状況を示します。公共的な空間を支えるには、互いを信頼し、ルールを守り合う関係を築くことが大切です。
社会契約説は、まなびジムの倫理ジムの「社会契約説と啓蒙思想」の章で、法の支配や権力分立は政経ジムの「民主政治の基本原理」の章で、さらに詳しく確かめられます。基本的人権の保障は第5章「司法と人権」で、選挙と政治参加は第6章「政治参加と世論」で扱います。
一問一答
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